サイの多足歩行にかける青春(核動力の概念)
出典: 機動戦士ガンダムSEED Revival
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[編集] はじめに
- シゲト
- ねえサイ兄。
- サイ
- どうした?
- シゲト
- 前の話でニュートロンジャマーのせいで核分裂ができなくなったって話をしたよね?
- サイ
- ああ。特に西ユーラシア地域は伝統的に核分裂による原子力発電が盛んだったから一番影響を受けていたね。
- (フランスは現在でも7割以上の電力を原子力に頼っている。)
- シゲト
- でも、このスレイプニールとかの軍艦は核融合で動いているんだろ?
- サイ
- それも正解。そもそも、普通の燃料発電では割に合わないからね。核融合の賜物さ。
- シゲト
- じゃあ、何で核分裂の発電所を核融合の発電所に変えて電気を作ろうとしないのさ。核融合は核分裂に比べて生成エネルギーの単位質量当たりの比率が大きいわけだからむしろ、軍艦程度に収まる大きさの核融合施設なら十分に発電所として建設できるんじゃないのかな。
- サイ
- おっ、良いところに気が付いたな。実はこれには深い理由
(製作スタッフ側の科学技術知識の欠落)があるわけだ。ちょうどゴランボイ地熱プラントっていう発電施設も本編中に登場した事だし、今日はその核融合について説明しよう。今回は色々な理由(製作スタッフと同じ轍を踏まない為)から結構長めの話になるから覚悟しておいてくれ。
- シゲト
- 大丈夫。これもメカニック修行の一環、全部聞くよ。
[編集] 核融合とは何か
- サイ
- まず、核融合とは原子という小さな粒子同士をぶつけて”融合”させる反応の事だ。この時に鉄より軽い原子同士を融合させてやると、融合して新しくできた核以外に膨大なエネルギーが放出される。この膨大なエネルギーを利用した発電方法が核融合発電というわけだ。
- シゲト
- 炭を燃やすと
- C + O₂ ⇒ CO₂ + 放熱
- が起きるのとイメージ的には似ているね。
- サイ
- イメージ的にはな。まあ、スケールの違いこそあれ実際にはどちらも結合エネルギーの概念で説明できるから当たらずとも遠からずってところかな。
- さて、この核融合だが生成エネルギーが膨大な事で有名な代物だ。あの砂時計を一瞬にして廃墟と化した核分裂ミサイルよりも単位質量当たりの生成熱量が大きいのだ。
- シゲト
- ただ大きいといわれてもなぁ………
- サイ
- 聞いて驚けではなく見て驚け。現在の火力発電に用いているガソリン1g、砂時計を灰燼に帰した核分裂燃料のウラン235の1g、そして核融合に用いる重水素1g、それぞれを完璧に反応させた時に精製できるエネルギーは以下の通りだ。
- ガソリン___1万1千カロリー(コップ半分の氷を一気に蒸発させる事ができるエネルギー)
- ウラン235_200億カロリー(プール1杯の温度を一気に10度上げてしまうエネルギー)
- 重水素____1300億カロリー(プール半分の氷点下すれすれの水を一気に蒸発させてしまうエネルギー)
- シゲト
- って、桁数の時点から違ってるし!?!
- サイ
- 要するに核融合1gの熱エネルギーが欲しかったらガソリン10万トン以上持ってこいというわけだ。核融合に劣るとはいっても核分裂もガソリン1万トンに匹敵する熱エネルギーを放出する。プラントが恐れおののいて友好国にまでニュートロンジャマーをバラまた理由が改めてよ~く分かっただろ?
[編集] 何故核融合ができないのか
- シゲト
- え?何で核分裂を阻害するニュートロンジャマーが核融合の話で登場するのさ?
- サイ
- フッフッフッ………分かってない、全く分かってない。核融合をする為には基本的には核分裂が必要なのさ。だから、ニュートロンジャマーがばら撒かれて以来、ウラン系の核分裂ミサイルはもとより、水爆系の核融合ミサイルも使えなくなったのさ。
- シゲト
- ???
- サイ
- じゃあシゲトに質問だ。紙切れは燃えるよな?
- シゲト
- ???当然でしょ。
- サイ
- だが、俺達の身の回りにある紙切れはたくさんあるが、どれもいきなり発火したりはしない。燃焼するための条件は揃っているはずだ。周囲に酸素もある。じゃあ、何故普段は燃えない?
- シゲト
- そりゃ当然引火するものがないからだろ。火とか電気とかの熱源の近くになければ紙だって燃えないよ。
- サイ
- それと同じ事が核融合にも言えるんだ。核融合も、ある程度の熱源がないと反応を開始してくれない。ただ、普通の紙切れと核融合燃料との違いは、普通の紙切れが大体400度にも達すれば勝手に燃えてくれるのに、核融合燃料は最低でも1億度以上の温度になっていないと反応してくれないわけだ。
- シゲト
- そんな温度、どうやって作るのさ!太陽から貰い火でもしろと!
- サイ
- だから、そのための核分裂なのさ。核分裂で発生したエネルギーを上手く反射させて核融合燃料に当ててやると核融合燃料もさすがに反応を始めて、後は連鎖反応が起きて大爆発。ちょうど、線香の先っぽに火を付けただけで、線香は最後まで燃えるのとスケールは違うが同じ概念だ。
- シゲト
- さながら地球の弔い火になっちゃいそうだけどね。
- サイ
- あながち間違ってないところが辛いところだな。
- シゲト
- でもさ、核分裂ができないと核融合ができないのはわかったけど、それじゃあ本当にスレイプニールとかは動く世界七不思議になっちゃうぜ。
[編集] 核融合ができる秘密
- サイ
- 当然これにも秘密がある。さっき言ったとおり、核融合とは鉄より軽い原子核同士の融合であり、言い方を変えればその条件を満たす組み合わせであったならばどんな組み合わせでも可能といえる。その無数の組み合わせの中では、かなり実用化がたやすいものもあるわけだ。以下はCE.世界で用いられている核融合反応御三家だ。
- D + D + D ⇒ ⁴He + p + n
- D + T ⇒ ⁴He + n
- D + ³He ⇒ ⁴He + p
- シゲト
- この反応が一番やりやすい反応なんだね。
- サイ
- そうだな。これ以上になるとそれこそ太陽クラスの超高圧高熱が必要になってくるからな。で、更にこの3つの中でも一番楽なのが真ん中の通称D-T(デューテリウム、トリチウム)反応と呼ばれる反応だ。スレイプニールなんかの核動力で現在使えるのはこの反応だけなんだ。
- シゲト
- な~んだ、ならそのD-T反応で世界中の各発電所を動かせば―――――
- サイ
- お前な、核分裂と核融合を一緒にするな。
- 核融合時には核燃料が1億度以上、つまりプラズマ状態っていう滅茶苦茶危険な状態になるんだぞ。このプラズマに触れたら、基本的にどんなものでも溶けて削り取られちまうから、普通の核融合容器はプラズマを磁場で操作できる事を利用して、容器とプラズマとの間に磁場で空間を作って容器を守ってるんだ。そんな特殊な容器の無い核分裂発電所でよしんばプラズマを作ったとしてどうする?一瞬で発電所ごとお陀仏だぞ。
- 分かりやすく言えばフリーダムガンダムのあのバラエーナ(あの腰のレールガンっぽい奴も一応は『プラズマ収束ビーム』らしい)が容器内で暴れまわってるようなもんなんだからな。
- シゲト
- うわー………PS装甲でも貼り付けていなきゃやってられないぜ。
- サイ
- ついでに言うと、D-T反応の燃料自体も希少品なんだ。
- シゲト
- マジ?
- サイ
- マジ。デューテリウム(重水素)は普通の水の中にわずかながらに含まれているから精製もしやすいんだが(むしろ同位体の精製の中では一番やりやすい)、トリチウム(三重水素)は放射性同位体な事もあって、自然界にほとんど存在しないんだ。
- シゲト
- え、それじゃあ………
- サイ
- ただ、リチウム原子を分解すると三重水素が発生するから、リチウムさえあればある意味では安定的に供給できる。けれども、そのリチウムも宇宙に無いわけじゃないんだが地球上の電力を賄えるほどにはたくさん供給できないんだ。
- シゲト
- 結局ダメじゃん。
- サイ
- まあ、そうだな。結局、希少なせいで発電なんかには到底使えないから、軍用艦艇の燃料としてしか今は使われていないってわけだ。
[編集] 夢の燃料
- シゲト
- でも、もし実用化の目処が立ったらこの世界中のエネルギー不足も解消されるんだろうなぁ。待ち遠しいぜ。
- サイ
- そんなに簡単に実用化できたらとっくにプラントあたりが実用化しているよ。それに、その『夢の燃料』であるが為に、万が一にも実用化レベルまでこぎつけてもあまり前途は穏やかじゃないんだよ。
- シゲト
- えっ、何でさ?
- サイ
- 考えてもみろ。今でこそ希少だから軍用燃料のレベルに甘んじているが、それが大量に生産できるようになったらどうする?技術開発に成功した国は、間違いなくオーブすら上回る世界最強の強国になる。何せ、モビルスーツの動力源から食料プラントの人工光、民間インフラのほぼ全てとCE世界では電力でほぼ全てのエネルギー消費をまかなっている。電力供給の巨大化はそれだけで食糧自給率の向上、社会インフラの安定化、軍事力の強大化、工業生産額の増進と正のスパイラルを生み出す。そして、現在の世界情勢では、他国から一歩先へ進んだ際に、他国の恨みを買わない国はない。親オーブ国なら反オーブ国、反オーブ国なら親オーブ国って具合にな。そうして、この世界の勢力バランスを崩す技術の為に、両陣営が結集して、最後に起きるのは世界規模の冷たい戦争、冷戦だ。
- シゲト
- ………
- サイ
- いや、冷戦ぐらいならまだましだ。冷戦になるって事は、最低限の技術を先発者が後発に譲渡したって事だ。もし、先発者が後発に技術を出し渋ったら?後発は焦る。時間が経てば経つほど先発者との差は開くばかり。ならば手は一つだ。まだ差が狭い内に全てを決してしまえと。三国時代、国力に劣る蜀が急ぐばかりに民の負担を省みずに北伐に精を出したように。中世末期、持たざる国達が持てる国達に史上初の総力戦を仕掛けたように。
- シゲト
- ………いや、さすがにそれは………
- サイ
- まあ、少し言い過ぎたかもな。歴史上、優れた技術が戦争を起こした先例は少なく、戦争が技術の利点を鮮明にした例は多い。銃火器の発生に然り、航空機の発生に然り、小型ビームライフルの発生に然り。
- でも、今の時代は技術が全てを覆してしまう事が鮮明な時代だ。遺伝子操作技術によって後に地球一つと戦う人種が生まれ、ニュートロンジャマーによって小国が超大国を圧倒し、スーパーコーディネイターが数多の軍勢の存在を無力化した。
- そんな時代に、その横暴な新技術の猛威に揉まれた現代の指導者達は、果たして他国が世界を変革し得る技術を得た時に、平和的解決などという生温い対応だけで納得できるのか。そして、もし自分がそれを得た時に、他国に譲り渡すなどという寛容な態度に甘んじれるのかってね。
- シゲト
- 確かに………
- サイ
- 少なくともこれだけはいえる。
- 現在、大小問わずどの陣営も新技術の開発に余念が無い。ここ10年は技術開発が世界の覇権を左右する時代だったからだ。モビルスーツ、PS装甲、小型ビーム兵器、ニュートロンジャマー、グングニール、ニュートロン邪魔ーキャンセラー、ジェネシス、たった10年で世界を激動させるに十分な技術がこれだけ生まれているんだ。
- 世界全体がそのベクトルに舵を切るならば、新たなスーパーテクノロジーの登場も、そう先の事ではないはずだ。その技術を、どう用いるのか?その決定は誰がするのか?その時には、俺達技術者は有限について有限を知れば良い専門家ではなく、無限について無限を知る事を要求される哲学者にならざるを得ないって事さ。
- シゲト
- そんなの無理だよ。俺達には荷が重過ぎるよ。
- サイ
- ああ。俺達には荷が重過ぎるし、そもそも俺達だけで決めちゃいけない。じゃあ、誰が決めるのか?せめてそれだけは考えておきたいよな。
- シゲト
- うん。そうだね。ありがとう、サイ兄。


















