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プロローグ

出典: 機動戦士ガンダムSEED Revival

(Phase-01-00 から転送)

静かな森の中を、風が緩やかに吹いていた。木々が枝を揺らすたび、ちろちろと瞬く木漏れ日が、地面に複雑な模様を描く。

そんな森の中、一本の木の下に佇む黒髪の青年。目立つ赤い瞳を隠すサングラスの下、眉がゆがむ。青年は知っている。その木の根元に、桃色の携帯電話が埋まっている事を。それは八年前に死んだ、妹の形見。


前回、彼がここを訪れた時、木は赤い葉をつけていた。青年の記憶の中で、今も変わらずはじけるように笑う妹の、その肩に降っていた落葉の色。今は青い葉をつけるその木の根元に、青年はしゃがみこむ。

黒く柔らかな土をその傷だらけの手で堀りだすと、肘のところまで埋まるまで掘りぬいた穴の底に見つかったのは、小さな金属の箱。

青年はその箱を開け、変わらず存在している携帯電話の横に、小さな金属片をそっと添えた。<LHM-BB01 MINERVA>――錨を思わせるシルエットの船と、その名を記したペナント。サングラスを外し、幹に手を触れ、小さな声で呟きだす。


「父さん、母さん、お久しぶりです。ごめんな、マユ……俺はまだお前のところには行ってやれない。 でもな、今日は代わりに俺の仲間を連れてきたんだ」


青年は、懐から1枚の写真を取り出した。写されているのは旧ザフトの軍服を着用した男女の一群。老若男女様々だ。その1人1人を指差しながら、青年はもういないはずの人達に語りかける。


「みんな、これが俺の妹のマユさ。仲良くしてやってくれ」


金髪を長く伸ばした秀麗な顔立ちの少年。

「マユ、こいつはレイだ。俺を最後まで信じてくれた、一番の親友だ」


快活に笑う、赤毛の少女。

「こいつがルナ。口うるさい奴だったけど……俺の大事な人、だった」


緑の作業服を着込んだ2人組の少年。

「こいつらはヨウランとヴィーノ。軽い奴らだけど、良く笑う気のいい連中だ」


皆の中央で静かに微笑む白服の女性。

「この人が俺の上司のタリア艦長。怒らすと怖いけど、これでけっこう優しいとこもあるんだぜ? 」


写真に写った人々を一人ずつ思い出すかのように、青年は語りかける。


「で、隣がアーサー副長、それにブリッジクルーのアビー、バート、マリク、チェン――みんなほんとにいい奴らだったんだ。だから、俺が行くまで大人しくしてんだぞ、マユ……」


刻々と語り続ける度に歪みだした青年の声は、もはや涙声としか呼べぬものに変わってしまっている。そのまま言葉は途切れ、静かな森に響くのは青年の嗚咽。しばし後、青年は目元の赤みを隠すように、サングラスを深くかけ直す。

写真を箱の中に収めると蓋を閉め、青年はそっと穴の底に戻す。埋め戻された跡とわからぬよう、青年は腐りかけの落ち葉を撒きなおすと、木に背を向け歩き出した。

彼の大切な人々、その全てを奪い去った者たちへの復讐の念を、再び心に刻みつけながら。



「父さん、母さん、マユ、ステラ、ルナ、レイ、ハイネ、ミネルバのみんな……俺は、俺は帰ってきたぞ……」