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真実を欲する野次馬

出典: 機動戦士ガンダムSEED Revival

(Phase-09-00 から転送)

――今回オレは取材の為に中東のガルナハンへ行く事になった。相手はレジスタンスの代表的人物。組織名やその代表者の名前は、まだ此処に書かないでおこう。


今この世界全体から見れば、彼らはテロリストだ。昔取材した南米軍とは、発祥もバックグラウンドも最終目的も違う。エネルギーと食糧資源の充実なら、戦う以外に幾らでもやる事があるという声はあるし、オレもそれは間違っていないと思う。モビルスーツで戦闘を行えるという時点で本質的な貧困状態でも無いだろう。

どこからかのスポンサーに支援を受けた、平和を乱す無法者の傭兵部隊。統一連合の報道番組でコメントしたアナリストは、彼らをそう評していた。話の運びに無理は無く、頷けないわけじゃなかった。だが、見ていたオレの心には、ひとつ腑に落ちない所が生まれていた。


それは、生活を脅かされていない側から見た意見でしかないという事だ。戦いが無ければ平和だとは限らない。オーブの人間が食べ残した料理を残飯として捨てられているまさにその時、一粒の小麦を奪い合って傷つく子供達がいる。何故こんな事が起こるのか?それは、世界に広がる貧困を見ていないからだとオレは思う。


皆が貧しくなれば良いなんて言うつもりはない。統一連合の圧制で貧困を強いられているなんて考えるほど、オレは世間知らずじゃない。だが、自分達の食事や電気がどこから来ているかも知らない、もしくは知ろうとしないオーブという国、そしてそれを支えている連合は明らかにおかしい。強者の目線だけから生まれた意見や報道は、決して『真実』じゃない。


オレはヒーローインタビューをしに行くわけじゃない。見たままの事を真実として、報道するつもりだ。それがジャーナリストの役目だとも思っている。そして戦いがあれば、オレは……






「オレはアウトフレームを駆り、その戦いの真実を追っていく……か?」


「カイト…! 途中で覗くのは、良い趣味じゃないぞ」


「おやおや『野次馬』ジェスに覗きを注意されるなんてなあ」


顎鬚を短く生やした細面の男は、黒髪にメッシュを入れた青年の言葉に肩を竦めてみせた。

ここはエンジンの駆動音が鳴り響く客席部分。予算の関係上、乗り心地は最小限しか保証されていない。


「ったく、変わらんなお前は。よりによってテロリストに直撃取材なんぞ……小汚い部屋、薬臭い飲み水。お守り役も一苦労だ。スーツもくたびれちまったし……あーァ、ガルナハンのクリーニング屋でもチェックしとけば良かったなあ」


「し、仕方ないだろ!モビルスーツを2機積めて、出来るだけ安い運賃で……って検索したら、この便だったんだからさ」


「幾らでもやりようはあったろうが? ホントなら今頃な、俺はキレイ所のキャビンアテンダントと電話番号交換してるはずだったんだ。……だが、まあ」


カイトはそこで言葉を切り、横目でジェスを見る。小さく笑って見せた。


「お前に付き合わされて良い事もあった。退屈はしないし、何より……」


「……何より?」


「メカニックの女性陣が思ったよりレベル高くてなぁ。これがまた……」


「……変わらないのはお互い様じゃないか」


既にアプローチしたらしく、笑みを隠そうともしないカイトを見て、肩を落として苦笑いするジェス。と、部屋のスピーカーからノイズまみれのアナウンスが流れた。


『到着まで約20分です。お客様はシートに座り、ベルトをお確かめください。本日はビゴー航空を御利用頂きまして、まことに……』


「空港は……予想通りか。機動部隊が哨戒してる」


ジェスがラップトップの電源を切るのを尻目に、備え付けられた小窓から地上を見下ろすカイト。全高20メートル前後のモビルスーツは容易に見つけられる。荒事慣れしたカイトならば尚の事だ。


「良いかジェス?言っとくが、本当にヤバくなったら……」


「解ってる解ってる!」


からりとした笑顔で即答するジェスに、カイトは額に手を当てて深々と溜息をつくのだった。


CE78、11月ガルナハン上空にてのひとコマ――。

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